ジブンクロニクル

ジブンクロニクル

今日のブログは、2021年4月7日に麻植倫理法人会さんのモーニングセミナーでお話させていただいた内容の記録です。話し言葉(?)としてお楽しみくださいませ。


おはようございます。佐藤デザイン工房、佐藤あすかです。「世界にひとつのキャラクターで豊かな心を育てます」を経営理念に、グラフィック、WEB、キャラクター、パッケージなどのデザインでみなさまのお手伝いをしています。また、徳島県よろず支援拠点でデザインに関するご相談をお受けしたり、四国大学メディア情報学科の非常勤講師としてデザインの講義を担当したりもしています。

さて、みなさんは、子どもの頃、何に夢中だったか覚えていらっしゃいますか。また、子どもの時に好きだったものが今の自分にどんな風に存在しているか考えられたことはあるでしょうか。

私が四国大学で非常勤講師をさせていただくようになってちょうど10年になります。10年前、拙い私が学生さんにきちんと教えられるだろうか、と思案した際に「せっかくなら、私が好きでやっているWEBデザインを、学生さんたちにも好きになってもらえるようにしよう。技術の伝達だけでなく、心の部分も大切にしよう」と決めました。そこで考えた教材が、本日のタイトルにさせていただいた「ジブンクロニクル」です。クロニクルとはご存じの通り「年代記」や「物語」のことで、直訳すれば、私の物語ということになります。

どのような内容か少し説明いたします。

まずは、0歳から20歳まで、それぞれの年齢で好きだったものを思い出しながら箇条書きにします。20年分ぐらいすぐに思い出せるでしょと思いきや、今を懸命に生きている学生さんたちにはなかなか思い出せません。そこで、たとえば自分が生まれた年に流行していたもの、歌や映画やテレビ番組、流行語などから思い出してもらう方法をとります。Wikipediaで調べたり、赤ちゃんの時のことはご家族に話を聞くなどしてもらったり。みんな同年代なので、「あれ何年生の時に流行ったっけ?」とか「私もめっちゃはまった~」とわいわい言いながら表を埋める姿が微笑ましく、また、何か頑張ったこと、たとえばホームランを打ったとか、部活の部長になったとか、そういったことを見える化することで自己肯定感が高まる様子も見られます。

20年の振り返りが終わったら、好きなものをトリガーとして思い出す出来事を文章にし、その後、自分とふるさととの関わりを考え、最後に「今の私をつくるもの」について考察してもらいます。子どもの時に好きだったものが今の自分にどんな風に存在しているか、そこから自身の未来の可能性を考えてもらうわけです。
この「ジブンクロニクル」を始めようと思った時にヒントになったのは、富野由悠季さんという有名なアニメ監督さんが若い人に向けた講演の中でお話していたことでした。

「本当にやりたいことがわからないとか、自分に何の才能があるのかわからない、という相談を若い人から受けることがあります。本当に才能のある人というのは、子どもの時から既に一流。卓球の福原愛ちゃんなんかがそうでしょ。でも、大多数の人がそうではない。そんな人はどうすればいいか。今まで生きてきた人生をゆっくり振り返ってみてください。その中に必ず、自分が夢中になれることのヒントがあるはずだから」という内容のお話でした。

このお話を思い出し、もしかしたら人生を振り返ってもらうことで、夢中になれるものを見つけられるのではないか、就職活動が本格的に始まる前に、自分を見つめ直し、何かしらの方向性が定まれば、と思ったのです。結果、学生さんたちも概ね楽しんで課題に取り組んでくれており、私は私で学生さんひとりひとりの好きなものや人となりを知ることができています。

ところで、この「ジブンクロニクル」、まずは自分でやってみないことには始まらないだろう、ということで私自身も0歳から20歳まで好きだったものを振り返ってみました。

小学1年生の時、サンタさんにおもちゃのタイプライターをお願いしたこと。4年生の時には、母が仕事用に購入した液晶画面に1行しか表示されないワープロを借りて劇の台本を書いたこと。同じ時期に、父がパソコンNEC9801を買ってきて、「これからはパソコンで絵を描く時代が来るぞ」と言われたこと。ペラペラのフロッピーディスク。大きな音のプリンタ。忘れていたことが次々に思い出されます。

私は1975年生まれの45歳ですので、小4の年ですと1985年頃、この年で家にパソコンがあったというのは奇跡だと思います。テレビは禁止なのに、パソコンでプログラムを打ち込んだり、ワープロで文章を打ったりするのは認められていました。現在、パソコンは私が仕事をする上で必需品ですが、遡れば子どもの頃の体験がルーツになっているのだなと、両親に感謝しています。

そのほかにも、中学生の時、ポスターカラーとレタリングを愛し、ひたすらポスターを描いたこと。高校では東四国国体のマスコットキャラクターすだちくんや、キテレツ大百科のコロ助など、丸いキャラクターが愛しくてたまらず、ノートの片隅によく落書きしていたこと。早く徳島を出たい、と思っていたのに、県外の大学に行ってからは徳島の良さに気づき、ふるさとのあたたかさがわかったこと。改めて振り返ってみると、おおよそ生まれて20年の間に今の私につながるベクトルが形成されていたのだなぁということがよくわかりました。

実は今、自分自身の将来について、このままでいいのだろうかと考え直しています。未来を思う時は、まず歴史を振り返る。今日、この機会をいただいたことで、自分が大切にしていたものや思いを確認しつつ今後の方針を打ち出すということが思い出せました。感謝申し上げます。

これからもし、みなさんに先が見えないような状況が訪れたら、ぜひ「ジブンクロニクル」でご自身のルーツを言語化してみてください。進むべき道はわからなくても、進みたい道が見えてくると思います。

以上、お聞きいただきありがとうございました。